コラム
DXを推進する上で心掛けるべき3つのこと
DX推進にあたっては、人材育成や戦略立案などさまざまな課題があります。これらをひとつひとつ解決していくことで、成功への道は確実に拓けていきます。この記事では、DXを推進する上で心掛けるべき3つのポイントを解説していきます。
目次
心掛けるべきこと① DXを推進する領域は慎重に決める
DXとは、デジタルやデータを活用して既存のビジネスモデルや組織文化を変革し、市場での競争力を上げていく取り組みをいいます。
これまで業務の多くをアナログで行ってきた企業にとっては抜本的な改革が求められますが、組織を大胆に改革しようとしていきなり全社的にDXを進めることはリスクが大きいためおすすめできません。
DXを推進する領域を決め、成功事例を増やしながら段階的に広げていくとよいでしょう。
では、どの領域からDXに取り組むとよいのでしょうか。
利益規模の大きな領域ではDXによる効果が得られやすい
DXは利益規模が大きい領域でDXを実現することで、得られる効果も大きくなります。
たとえば、DX推進の一環でデータドリブンに意思決定をできるようになることで100億円の事業を5%成長させ、105億円増益させることは実現可能な範囲といえます。しかし、10億円の事業を15億円にするとなると成長率は50%。よほどのことがない限り、実現は難しいでしょう。
5%の成長率が現実的だとすると、10億円の事業を10億5千万円に成長させることは可能かもしれません。しかし、企業の規模にもよりますが、5千万円や5百万円程度の利益アップでは、組織としてメリットを感じにくいのではないでしょうか。データ分析にかかるコストやコンサルタントの外注費などを考慮すると、ほとんど効果が感じられない可能性もあります。
このように、利益規模の大小によりDXで得られる効果は大きく変わってきます。どの領域であればDXによるメリットがもっとも得られるのか、十分に検討しましょう。
安定したデータが揃っている領域に導入する
利益規模の大きさによりDX効果が左右されると述べましたが、規模さえ大きければよいというわけではありません。安定した条件下で収集されたデータが一定量あることも大切です。
例えば長年消費者に向けて家電を販売してきたメーカーには、顧客データや売上データが豊富にあるでしょう。これらのデータを分析してDX戦略を立てることで売上アップが期待できます。
一方で、発電所や工場の建設を行う企業の場合、顧客データや売上データを分析して受注増加につなげるという活用には適さないでしょう。なぜなら分析に利用できるほどのデータ量がなく、また過去の受注データがあるとしても、受注当時と現在とでは社会情勢などの状況が違っていて参考にならないことがあるためです。
ちなみにこうした企業でDXを導入する場合は、受注増加よりもオペレーションやプロセスの見直しといった面に活用の糸口があるといえるでしょう。
このように、分析可能なデータが十分に蓄積されているかどうかもDX導入領域を決める際のポイントになります。
心掛けるべきこと② 実現可能性を十分に検討する
どんなに社内でDX推進の声が高まっても、その実現が難しい場合もあります。以下のポイントを確認し、DXをスムーズに推進させる方策を検討する必要があります。
経営層がDXに積極的かどうか
DXは長年続いてきた組織文化を変えるかもしれない取り組みであり、導入・推進には経営者の意思決定が不可欠です。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)がまとめた「DX推進指標 自己分析結果分析レポート(2020年度版)」を見ると、経営層の姿勢がDX推進にとって重要な役割を果たしていることが分かります。
同レポートでは、「DX推進指標(※)」により診断されたDX成熟度の平均値が3以上の企業を「先行企業」、先行企業以外の企業を「非先行企業」とし、両者の「経営トップのコミットメント」の度合いを公表しています。
これによると、先行企業では同指標における成熟度は平均3.96であるのに対し、非先行企業(先行企業以外)では平均1.62と、大きな差があることが分かります。
このように、経営層がDXに積極的でない場合は導入に至りにくく、導入できたとしてもスムーズに進みにくいといえます。また、経営層がDXの重要性を理解していても、既存システムを刷新するという大きな決断にまではなかなか至らないケースも多々あります。
いかに経営層を納得させ、決断を下すところにまで繋げるかが大きな課題となります。
取引先との関係性
DXを導入したい領域が、自社の一存でコントロールできるものかどうかもポイントです。
例えば、データ分析の結果、他社から受託している業務に無駄なコストがかかっていることが判明した場合、その業務にDXを導入してオペレーションを変更したり業務自体を廃止したりするには相手企業を巻き込んでの調整が不可欠です。
このような場合のDXはスムーズには進みにくいといえます。
(※DX推進指標…自社のDX成熟度や課題を社内で認識・共有して次のアクションにつなげることを目的に、経済産業省により策定された指標。成熟度はレベル0からレベル5までの6段階で評価される)
心掛けるべきこと③ 局所最適化に注意する
DX推進がうまくいかない要因の1つとして、局所的に導入してしまった場合が挙げられます。
企業がDXにより競争力を上げるためには、組織全体にとっての最適化を目指さなくてはなりません。しかし、全体を見ずに部門ごとに最適化してしまうと、組織としてのメリットが得られなくなる場合があります。
メーカー企業を例に考えてみましょう。この企業の生産部門では、「生産過多で無駄が生じているため、作りすぎを抑えたい」という目標のもとにDXを実践しています。
このとき生産部門では、現在の売上が今後も続くという前提でDXを進めています。一方、営業部門では「今よりも売上を伸ばす」という目標を立ててDXを推進しています。
この場合、生産部門と営業部門の双方で目的が達成されたら何が起こるでしょうか。営業戦略の成功により需要はアップしているのに、製品の生産が追いつかずに供給できないという事態を招いてしまいます。
このメーカーでは、生産部門と営業部門が情報を連携して、製品をいくつ製造するのが組織にとって最適なのかを決定するべきでした。
このようにDXの局所最適化が起こってしまうと、部門間で足を引っ張り合う状況になり、組織としてのデメリットもつながりかねません。
DXを進める際は、導入により効果が得られる範囲が局所的なものではないか、組織の利益につながるものかといった観点で考えることが大切です。
DXを推進して競争力をアップさせよう
多くの企業がDXの重要性を認識しながらも、なかなか踏み出せずにいます。そのような中でいち早くノウハウや注意点を理解してDXに取り組むことで、市場で頭ひとつ飛び出るほどの成長が期待できるかもしれません。本記事で紹介したポイントを心掛け、DXの導入・推進を検討してみてはいかがでしょうか。
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