DX推進のための計画・指針の作り方。推進指標・KPIの立て方を解説 | DX | DataVehicle

コラム

DX推進のための計画・指針の作り方。推進指標・KPIの立て方を解説

社会の急速なデジタル化に伴い、企業のDX推進が急務となっています。しかし「何から手を付ければよいのか分からない」「進め方が分からない」などの理由から、DXに取り組めていない企業も多いでしょう。

そうしたとき頼りになるのがDX推進ガイドラインやDX推進指標です。この記事ではDX推進ガイドラインや推進指標について、またKPIを立てる際に注意したいポイントについて解説していきます。

DX推進ガイドラインとは

DXを推進する上では明確な計画・指針が欠かせません。これらを活用することで、DXを推進する上で抑えておくべきポイントが明確になります。

自社でこの計画・指針を作成する際には、経済産業省がまとめている「DX推進ガイドライン」に沿って進めるとスムーズです。

DX推進ガイドラインの目的

経済産業省では、DX推進ガイドラインをまとめた目的として次の2点を挙げています。

・DXの実現やその基盤となるITシステムの構築を行なっていく上で経営者が抑えるべき事項を明確にすること
・取締役会や株主がDXの取組をチェックする上で活用できるものにすること

DX推進ガイドラインの内容

ガイドラインは大きく2つの項目から構成され、それぞれの項目で企業が取り組むべき課題を示しています。

(1)DX推進のための経営のあり方、仕組み

1.経営戦略・ビジョンの提示
2.経営トップのコミットメント
3.DX推進のための体制準備
4.投資等の意思決定のあり方
5.DXにより実現すべきもの:スピーディーな変化への対応力

(2)DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築

(2)-1 体制・仕組み
6.全社的なITシステムの構築のための体制
7.全社的なITシステムの構築に向けたガバナンス
8.事業部門のオーナーシップと要件定義能力

(2)-2 実行プロセス
9.IT資産の分析・評価
10.IT資産の仕分けとプランニング
11.刷新後のITシステム:変化への追従力

DX推進指標とは

DXを推進する上では、自社の現状や課題を認識するための客観的な指標が不可欠です。経済産業省では、自社のDX成熟度について認識し、今後のDXの進め方を決める材料として活用してもらうよう、「DX推進指標」を策定しています。

DX推進指標の内容

DX推進指標は、ガイドラインで示された次の2本柱で構成されています。

① DX 推進のための経営のあり方、仕組みに関する指標
・「DX 推進の枠組み」(定性指標)
・「DX 推進の取組状況」(定量指標)

② DX を実現する上で基盤となる IT システムの構築に関する指標
・「IT システム構築の枠組み」(定性指標)
・「IT システム構築の取組状況」(定量指標)

定性指標は合計35項目。そのうち9項目は「キークエスチョン」で、経営者自らが回答することが望ましいとされています。また、26項目は「サブクエスチョン」で、経営者が経営幹部、事業部門、DX 部門、IT部門等と議論をしながら回答するものとされています。

DX成熟度の評価

定性指標の各クエスチョンに回答することで、自社のDX成熟度についてレベル0(未着手:経営者は無関心か、関心があっても具体的な取組に至っていない)~レベル5(グローバル市場におけるデジタル企業 :デジタル企業として、グローバル競争を勝ち抜くことのできるレベル)の6段階のうちどこに位置するかが分かります。

また独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)では、「DX推進指標 自己診断結果入力サイト」を公開しています。サイトから自己診断結果を入力すると、後日IPAによる診断結果分析やベンチマーク作成・提供などが行われ、今後のDX推進に役立てることができます。

DX推進におけるKPI設定のポイント

ガイドラインと推進指標の活用により自社のDX成熟度や課題が認識できたら、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指数)を設定します。

KPIを設定する際に注意すべきポイントを見ていきましょう。

ロジックベースで考えず、実際のデータを分析して設定する

KPI設定の際には、ロジックよりも実際のデータを重視することが大切です。

従来、KPI設定の際にはKGI(最終的な目標)をロジカルに分解しながら課題を見つけていく手法がとられてきましたが、この手法では状況が改善されないというケースが多くありました。

なぜなら、この手法で立てられたKPIでは部門間の関係性や組織全体の状況が把握しきれないためです。

具体的に考えていきましょう。

例えば、組織のKGIがトータル売上高アップだとします。この目標を達成するためには客数を増やす必要があるとして、新規客獲得のための広告を打つことにしました。そして、客1人獲得あたりの広告単価を下げるという目標を立てました。

このように、目標を①売上高アップ→②新規客獲得→③広告単価を下げる、と分解して考えた場合、下位である③の目標が達成できたとしても、最終的な目標である①は達成できないということが起こり得ます。

なぜなら、広告単価を下げられたとしても、新規客の購入額が低ければ、トータルでの売上は上がらないからです。また、新規客獲得という目標のみが達成されても、そのために多大な広告費がかかっていれば売上アップには繋がりません。

このように、KGIを分解して設定したKPIでは局所最適化が起こりやすく、せっかくの対策も根本的な改善に繋がらなくなってしまいます。

上記から、KPIはロジカルベースではなく、「売上が上がったときの組織データ」「下がったときの組織データ」など実際のデータを徹底的に分析して、KGIに寄与するポイントを見極めて設定することが大切です。

同業他社の手法はそのまま使えない

DXとひと口にいっても、扱う商材によってKPIの立て方は異なります。

同業他社が成功したと聞いて同じ手法でKPIを立てても、その手法が自社の商材に合っていなければ効果は薄いでしょう。

例えば小売業でも、商材が単価100円のチョコレートの場合は「最終購入日」「購入回数」「購入金額」を指標とするRFM分析が効果を発揮します。しかし、商材がグランドピアノである場合、RFM分析はほとんど役に立ちません。

グランドピアノはチョコレートのように頻繁に買うものではないため、RFM分析によってリピーター獲得に繋がる戦略を立てるのは難しいのです。

グランドピアノで売上を上げたいなら、リピーターはいないという前提で臨まなくてはなりません。その上で「いかに新規の客を獲得するか」「単価の大きい商品を売るか」といった観点でデータを分析し、戦略を立てる必要があります。

KPIを立てる際には、自社の商材で売上を上げるにはどんな戦略が必要なのか、そのためには何のデータを分析するべきかを十分に検討しましょう。

数値に表れないデータも重要

商品の購入金額や購入回数などは数値データとして分析できますが、数値には表れてこない情報も重要な分析材料になります。

数値データを分析して立てたKPIが達成されない場合、顧客の属性や顧客ごとの購買傾向といった情報が重要な鍵を握っている可能性があります。

数値に表れない情報も丁寧に分析してKPIを設定することで、DXの効果はより発揮されるといえます。
DXをスムーズに推進するためガイドラインの活用を
DXブームの到来で、多くの企業がDXに挑戦しようとしています。自社独自のDX論に基づきオリジナルのガイドラインや推進指標を策定するケースも見られますが、労力がかかるうえ、日本で定義されるDX概念から外れていたり、漏れがあったりする可能性があるため、おすすめできません。まずは経済産業省がまとめているDX推進ガイドラインに沿って取り組み、DX推進指標の成熟度レベルを地道に上げていくことが大切です。

 

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