データの利活用について具体例を元に分かりやすく解説 | データサイエンス | DataVehicle

コラム

データの利活用について具体例を元に分かりやすく解説

IoTやSNS、クラウドサービスなどの普及により、企業が取得できるデータ量は急増しています。そんな中、「データがたまる一方で活用できていない」と悩んでいる企業は多いのではないでしょうか。ビッグデータ時代のいま、データをうまく利活用できる企業こそが強みを発揮できるといえます。では、適切にデータを利活用するにはどうすればよいのでしょうか。この記事ではデータ利活用の方法や効果、利活用の際の注意点などについて解説していきます。

データの利活用とは

データの利活用とは、ビジネス課題を解決するためにデータを用いてアプローチすることをいいます。

IT技術が飛躍的に進歩し、企業のデータベースには顧客データや売上データ、商品データといった各種データが猛スピードで蓄積されていきます。

こうした膨大なデータは経営戦略や営業戦略を立てる上で貴重な分析材料になりますが、上手く活用できなければただ管理に困るだけです。データは利活用してはじめて有意義なものになるのです。

データ利活用の目的

データ利活用の目的は、データをもとにさまざまな意思決定を精緻に行えるようにすることです。

人間の経験と勘に頼った意思決定は、従来から多くの企業で行われてきましたが、人間が触れられる情報はそれほど多くはありません。どんなに経験豊富な経営者でも、1万人の顧客情報をすべて記憶することは難しいでしょう。

しかし、データであれば100万人分の情報を把握し、それらを分析することで顧客の購買傾向や隠れたニーズをも発見できます。

このように、豊富かつ正確なデータに基づいて行われる意思決定は、人間が勘や経験に基づいて行う意思決定より精緻なものになるでしょう。

データ利活用で重要な3つの分析方法

データの利活用にあたっては、以下の方法に基づいて分析を進めることが大切です。

記述的分析

過去から現在にかけて起こったことを把握するために行います。過去データの平均値や最小値、最大値、標準偏差などを表やグラフにして観察し、過去に起こったこととその結果としての現状を客観的に把握します。

診断的分析

記述的分析で明らかになった物事の要因を把握するために行います。要因分析といえばわかりやすいでしょう。「それがなぜ起こったのか」「現在の状況に何が関係しているのか」を分析し、状況改善のためのヒントやリスク回避の方法を探ります。

予測的分析

将来の予測を立てるために行います。記述的分析と診断的分析から得られた結果を組み込み、「〇〇をこう変えれば状況はこのように改善するだろう」といった予測モデルを立てていきます。

これら「過去から現在の把握」「要因の解明」「未来予測」をしっかり行うことがデータ利活用において重要になります。

データ利活用で期待できる効果

経営判断は、「やるか・やらないか」「増やすか・減らすか」「どの程度のリソースを注ぐか」といった意思決定の連続です。こうした意思決定をデータの利活用に基づいて行った場合、どのような効果が得られるのでしょうか。

前述した3つの分析方法の観点から見ていきましょう。

過去の事例を基に客観的に判断できる

診断的分析により過去のデータを正確に把握することで、数値的根拠に基づいた冷静な振り返りができます。

いままでにない切り口のヒントが得られる

診断的分析により過去の事象の要因を分析することで、「〇〇がネックになっているから取り除こう」「リソースの配分を変えたらよさそうだ」「ノーマークだった部分に新しいニーズがありそうだ」といった解決策や新しい切り口を見つけやすくなります。

高精度の将来予測でリソースの最適化につながる

改善策を組み込んだ予測的分析を行うことで、機械的に行われてきた予算配分や人員配置を見直し、リソースの最適化を行えます。また仕入れの数量といった数値予測もより精緻に行えるようになります。

データ利活用の具体例

データの利活用について、コンビニエンスストアの経営を例に見ていきましょう。

コンビニでは「日販(一日の売上金額)」や「週販(一週間の売上金額)」が品揃えや仕入れ量を検討する際の重要な指標になります。これらの指標に基づいて売れ筋商品と売れていない商品を把握し、売れていない商品は仕入れ量を減らしたり、別商品に切り替えたりといった検討をします。この「日販や週販などのデータから過去を正確に把握する」プロセスは記述的分析に当たります。

続いては別商品を検討するプロセスです。

記述的分析により売れ筋商品とそうでない商品については把握できたので、診断的分析により「売れ筋商品の特徴」や「売れていない商品に共通する要素」を探っていきます。売れ筋商品の特徴がわかれば、これまでに仕入れたことのない商品でも売上が期待できると判断して仕入れてみるといった、新しいアプローチを試みることができます。

コンビニにおいて近い将来の予測的分析は日常的に行われています。「明日は近隣施設でイベントがあるからおにぎりを多く仕入れよう」「休日は売り上げが落ちるから週末の仕入れは少なめにしておこう」といったことです。従来こういった予測は肌感覚で行われがちでしたが、データを利活用することで、「無駄なく仕入れて売り切る」ことをより確実に行えるようになります。

データの利活用で注意すべきポイント

データ利活用に当たって注意すべきポイントは以下の通りです。

目的を明確にする

データ利活用の大前提は、「〇〇について分析したい。そのために××のデータが必要だ」というように、分析の目的と必要なデータを明確にすることです。

「何が課題かはよくわからないけれど、データを眺めていれば何かしらヒントが見つかるだろう」といったスタンスで臨むのは禁物です。はじめに分析の目的が定まっていないとどのデータを利活用すればよいか迷ったり、目についたデータをとりあえず分析してみたものの、望んでいた分析ができなかったということにもなりかねません。

分析目的に合ったデータを得る

分析目的が明確になったら、その目的を達成できるデータを入手しましょう。目的に合わないデータや情報が不足しているデータでは十分な利活用はできません。

データ利活用の目的とデータの不一致について、2つの具体的をもとに考えてみましょう。

ケース1:商品データの情報が不十分
小売店舗の経営者が品揃えを決める際に、売れ行き好調な商品について分析したいと考え、売上ランキング上位の商品データを揃えたとします。

しかし、商品データの情報が商品名のみであった場合、「この商品がどれくらい売れているか」「何と併買されやすいか」などはわかっても、具体的な商品の中身まではわからず、なぜ売れているかの分析は行えません。

品揃えに活かすためには、価格や特徴など、商品の詳細データも必要になります。

ケース2:データを必要とする人に共有されていない
食品を取り扱う場合、安全責任の観点からメーカーと小売業は食品成分情報を共有することになっています。

ところが、小売のマーケティング担当者や仕入れ担当者に情報が共有されていないケースがあります。これでは商品説明や仕入れ判断の際にその情報を使えず、意味のないデータになってしまいます。

上記2つのケースでは、まず「必要としているデータが存在するのか」、「存在しているとしたらそのデータへのアクセスが可能か」を明らかにしましょう。そしてデータにアクセスできない場合には、自らインターネットで商品を検索して情報を入力し、必要なデータを作成するのもひとつの手段です。

このように、データを入手するために一手間かけることが必要な場合もあります。そうした手間をかけてでも、目的に合ったデータをきちんと揃えることは適切なデータ利活用に不可欠なのです。

適切なデータ利活用で企業はより成長できる

データは「過去を把握し、起こった事象の要因を探り、未来に活かす」ためのヒントが詰まった宝の山です。企業活動を通じて得られるデータ量が急増しているいまこそ、本腰を入れてデータの利活用に取り組むときといえるでしょう。

ただし、闇雲にデータを眺めていても意味がありません。自社の課題を明確にし、課題解決のために必要なデータを集め、適切な方法で利活用してはじめてデータは価値を発揮します。

本記事で紹介した分析方法や注意ポイントを参考に、データの利活用を進めてみてはいかがでしょうか。

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