コラム
DX推進の成功事例や導入すべきか否かの判断軸を紹介
大企業を中心にDXの取り組みが進む中、「DXを早急に始めなければ」と焦りを感じている企業もあるでしょう。しかし、焦るあまりに見切り発車でスタートさせるのは禁物です。DXを成功させるためには、推進領域や推進体制などを十分に検討したうえで取り組むことが大切です。では、どの領域でDXを推進するかを、どう判断すればよいのでしょうか。この記事ではDXを推進すべきかどうかの判断基準や実際の成功事例について解説していきます。
目次
DX推進の判断軸は
企業の競争力を向上させるため、DXの実現は急務といわれています。しかし、何にでもDXを推進すればよいというわけではありません。現状をよく観察して、推進するべき領域を慎重に見極める必要があります。
DX推進を判断するには、次のような項目を軸にするとよいでしょう。
DXを推進しようとしている領域は業務が円滑に進んでいるか否か
現状で特に課題を抱えていない領域に対しては、DX推進を急ぐ必要はありません。
スムーズに業務がまわっているところに無理やりデジタルツールを導入したり不要なデータ分析を挟んだりすると、手間やコストがかかるだけでなく、現場の混乱を招いてしまうリスクもあります。
生産性向上により大きなメリットが得られるか
DXを推進した領域で一定の比率で生産性が向上した場合、それによってより大きなメリットが得られるかどうかも判断軸の1つとなります。
DX推進による生産性向上については、SSRN(Social Science Research Network)が発表した論文が参考になります。
この論文では、データドリブン経営(人間の経験や勘を排除し、客観的データに基づいて意思決定を行う経営手法)を行っている企業ではそうでない企業に比べて生産性が5~6%高いと報告しています。
DXではデータ重視の意思決定を行うため、5~6%の生産性向上が期待できるといえます。
この恩恵は売上規模が大きい企業ほどあり、たとえば利益1千万円の事業にDXを推進して生産性が5%向上した場合には、50万円の利益アップ。これが利益1億円の事業では500万円の利益アップとなり、利益1億円の事業で推進した方が大きな成長が期待できます。
DXの推進には人材確保やデジタルツールの導入などでコストがかかります。利益規模の小さい事業でDXを推進して利益が5~6%アップしても、かかったコストや労力と見合わずにメリットを感じにくい面があります。
利益規模の大きな領域で取り組んでこそ、メリットは大きくなるのです。
新たな市場に挑戦する足がかりになるか
前項では既存事業にDXを推進する際の判断軸について述べましたが、これとはまったく異なる判断軸もあります。それは、DX推進によって新たな市場に参入できるかどうかということです。
新しい市場で売上を上げられるようになると、既存事業の生産性が5%アップするのとはまた別路線の利益や価値が生み出されるようになるでしょう。
DX推進の成功事例
実際にDXを推進して成功した事例を見ていきましょう。
採用活動で推進した事例
人材教育には多大な時間と費用がかかるため、採用した人材がすぐに辞めてしまったりパフォーマンスが低かったりすると組織にとって大きな痛手となります。そのため将来的に活躍する人材をいかに見極め採用できるかが重要です。
そこである企業では新卒採用活動でDXを推進し、長く活躍してくれそうな人材を見極める取り組みを行いました。
採用から3年程度が経過すれば社員によって活躍度合いに差がついてくるため、採用後3年を経過した社員を対象に「採用プロセス」「採用時の評価」「採用時に取得していた資格」などのデータ分析を行いました。
すると「〇〇のプロセスで採用した人材の貢献度が高い」「現在活躍している社員の採用時の評価は〇〇だった」といった傾向が明らかになり、将来活躍するであろう人材を見極める判断材料を得られました。
BtoB営業で推進した事例
営業部門はデジタル化・データ活用ともに遅れており、SFA(営業支援システム)を導入しても進捗管理や参照程度にしか使われていませんでした。
また新規顧客を獲得したい場合には、「①展示会を開催し、②参加企業を対象にアンケート調査を行い、③有望と判断した企業を営業部員が訪問するか電話をかける」といったアナログな手法でアプローチが行われていました。
しかしこの方法では思うように顧客獲得に至らなかったため、よりデータを重視した営業活動を行うことにしました。
これまでの営業活動を通じて、営業部門には「展示会参加企業」「アンケート調査結果」「電話営業をした企業」「訪問した企業」「訪問回数」「成約に至った企業」といった各種データが蓄積されていました。
これらのデータを分析ツールで分析し、成約企業と成約に至らなかった企業の違いを探ることで、「アンケートで〇〇と回答した企業は訪問できる可能性が高い」「〇回以上訪問した企業で成約割合が上がる」といった傾向が明らかになりました。
そしてこの分析結果をもとに営業活動を見直したところ、大きな受注につながりました。
これまで経験と勘で「有望そうだ」と判断して行ってきた営業活動をデータ重視のやり方に切り替えたことで、大きな利益増につながった好例といえるでしょう。
BtoC営業で推進した事例
BtoC営業では、RFM分析(※)の結果を見て「優良顧客グループにはDM発送の頻度を上げる」「買ってくれそうと思われる顧客グループにクーポンを送付する」といったアプローチが行われてきました。
しかし「~してくれそう」といった、経験と勘に頼って行う判断は外れることも多く、顧客のニーズを把握しきれていませんでした。
そこで、データを重視したアプローチに切り替え、顧客リストやID-POSデータを分析ツールで詳細に分析していきました。
データをもとにアプローチすることでターゲットや顧客ニーズをより具体的に把握できるようになり、ターゲットに伝わりやすい広告メッセージを考えたり購入見込みの薄い顧客へのDM送付を減らしたりといった戦略を立てることができました。
※RFM分析…Recency(直近購入日)、Freqency(購入頻度)、Monetary(購入金額)を指標に顧客をランク付けし、それぞれの顧客グループに応じたマーケティングを行う手法
出店分析で推進した事例
出店分析は地図や人口統計などの公的資料を参照して行われるのが常ですが、多くの企業で同じような手法の出店分析が行われるため、土地の取り合いや競合との差別化が難しいという課題がありました。
こうした問題を解決するため、分析ツールを導入して「既存店舗の規模・パフォーマンス」「周辺環境」「競合の状況」といったデータについても深く分析していきました。
これにより「周辺に〇〇の施設がある店舗はパフォーマンスが良い」「自社顧客には××の属性の人が多いため、その属性の人が多く住む地域が有利」といった傾向が明らかになり、より集客が見込める立地探しや店づくりに役立てることができました。
DXの成功が企業の未来を左右する
DX推進により既存事業の成長や新市場への参入が実現できれば、企業は市場での競争力を大きく伸ばすことができるでしょう。
逆にいうと、競合がDXに取り組むことで自社のシェアが縮小していく可能性も十分にあるのです。これまで安定した経営状況を保ってきた企業でも、既存のやり方を継続するだけでは現在の立ち位置をキープできなくなるかもしれません。
DX推進によって自社ではどの事業を効率よく成長させられるのか、新市場への参入の可能性はあるのかなどを検討することから始めてみてはいかがでしょうか。
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