コラム
町全体を巻き込み、データに基づいたエビデンスのあるまちづくり/宮崎県高千穂町 町長甲斐宗之氏×西内啓対談 Vol.2
西内啓の対談シリーズ。宮崎県高千穂町 甲斐宗之町長の第2回です。
第2回では、国内屈指の観光地である高千穂町が、観光消費額を上げ地域経済を活性化するために行なったデータ活用・データ分析プロジェクトについて詳しくお伺いします。
町全体で連携して、分析結果をどう活かすか
西内 今回の我々がご提供した調査は、今後の町の取り組みの中でどのような位置づけになるんでしょうか
甲斐 そうですね、今回色々な関係機関で議論していくためのベースになったと思います。ここからこれをどう活かしていくかはまだこれからですね。なので今回出てきた分析結果を観光協会やまちづくり公社、商工会さんやJAさんなどで共有して、今後連携してなにが出来るのかを議論できると思っています。どこから手を付けていけばいいか、これまでぼんやりしていたところが明確になりました。
西内 ではここからの巻き込み力がすごく大事になっていきますね。巻き込む人たちがどんどん戦略に乗っかっていくとデータ分析の結果が実際に発揮できるところなのかもしれません。
甲斐 そうですね。先述の通り(第1回参照 URL記載) 観光に対して抱えている課題を解決するため観光マスタープランは、入り込み客全体の総数よりも観光消費額をどう伸ばすかというところに重きを置こうと方向性を変えました。今回実施したようなアンケートや調査結果を元に今後どう取り組んでいくかを議会や町の皆さんに示せたんじゃないだろうかと思っています。仮説に基づいて分析をすると、このような結果が出て、それに基づいて施策を打つ、という手法が今までなかったので、データ活用によって課題解決に一歩進められました。
“より効果的な施策を打ち、町全体の経済循環を促進していきたい
▲最終報告会の様子
甲斐 最終報告会の前に関係者を集めて中間報告会を行いました。その時、調査って毎年やるんですよねってみんな考えてたんです。その時油野社長が、こういう多変量解析で分析をすると、大きく消費動向や仕組み自体が変わるようなことがない限り毎年やらなくても大丈夫ですよと仰ったのが印象的で、ありがたいなと思いました。
西内 データ分析って大きく3つあって、いわゆる定点調査みたいなものって、記述的分析といわれるものなんです。例えば毎年、今の状況をモニタリングするっていうのは、変わるかもしれないし変わらないかもしれないってこと自体を知りたいっていうところなんですけど、そうではなくて何をつつくことでどのように変わるか知りたいというのは診断的分析といいます。“診断”とつくと病院ではその後処方が入るわけなんですが、何をしたらいいかアクションを考えていくというところに関して言うと、おおむね大きく消費動向や仕組み自体が変わるようなことがない限りはそんなに変えなくても大丈夫なんです。
甲斐 今回はこのように分析していただいたんですが、どうやったらうまくデータを活用できるのかなって職員は悩んでいると思うんです。こうして包括連携協定を結ばせて頂くことで、データ活用にまつわる悩みを相談できたり、どういったことが出来るか提案して頂けたらと思います。
西内 そうですね。今回は観光消費を切り口にしましたが、データ分析ってビジネス側だけでなく色々なテーマでできるんです。例えばよく検診受診をもっと増やしたいとか、がん検診もっと受けてくれればいいのにみたいなことってあるじゃないですか。それと同じような形で、じゃあがん検診を受けている人と受けていない人の違いを、同じような行動科学の枠組みでとらえることもできます。切り口や政策課題は色々あると思うんですが、住民あるいは外から来られたお客さんたちがどういう風な行動をとってほしい、じゃあいったいそこに対してどういった切り口が大事なんだろうっていうのは全く同じ枠組みで考えることが実はできるんです。
西内 最後にひと言、今後の展望を教えて下さい。
甲斐 いま地域内の活性化、経済循環というところでは昨年立ち上げた高千穂まちづくり公社を高千穂活性化のエンジンとして機能させたいと考えています。そこでいろんな施策を打っていく中で、やはりなにをやったら効果的なのか、今回のデータビークルさんの統計手法によって明確に示していただけるというところがわかったので、今回は観光という切り口でしたが、観光以外の分野についてもなにかお願いできるところがないかなと考えております。そういったところを相談しながら、より効果的な施策を打ち、より経済循環を促進していきたいと思っております。
西内 本日は、貴重なお時間をありがとうございました。
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