コラム
DXとCXの違いとは?具体的な推進例を元に解説
「企業の競争力を高めるためにはDXを推進することが重要だ」「顧客満足度を高めるためにCXを改善しよう」。そんな文言をよく見かけるようになりました。「DX」や「CX」。文字だけ見ればよく似た言葉ですが、それぞれ何を意味するのでしょうか。両者の違いを、具体的な推進例をもとに解説します。
目次
DXとは
DXはデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略語です。
日本では、2018年に経済産業省が発表したDX推進ガイドラインの中で、DXを次のように定義しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確保すること」
つまり、「デジタル技術とデータを活用することで製品・サービスやビジネスモデル、組織文化を変革し、競争力を上げていく取り組みがDXである」といえます。
DXを推進することで得られるメリット
デジタル技術の進歩により、ビジネスの現場にはよりスピード感が求められるようになりました。「経験や勘」に頼って意思決定をしていた従来のビジネス手法では競争優位に立てない可能性が高まっています。
米国の社会科学研究ネットワーク「SSRN」が発表した論文によると、データに基づいて意思決定する企業は、生産性が5〜6%高くなると記されています。
また、DXが注目されるようになった背景のひとつに、「基幹システムの老朽化(レガシーシステム)」が挙げられます。経済産業省によると、こうした複雑化・ブラックボックス化したレガシーシステムが抱える問題を2025年までに解決できなければ、年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性があるといわれています。これを「2025年の壁」といいます。
DX推進によってレガシーシステム問題を解消していくことで、将来のリスク回避にもつながります。
DXの推進事例
データやデジタル技術を活用してビジネスモデルや組織を変革するDX。企業では実際どのようにDXを推進しているのでしょうか。
近年増えているのが、採用活動におけるDXの取り組み事例です。
企業としては、よい結果を残しながら長く活躍してくれる人材を採用したいものですが、実際には入社して数ヶ月で辞めてしまったり、十分にパフォーマンスを発揮できない人を採用してしまったりするケースも少なくありません。
こうした課題は、データを活用することで解決できる可能性があります。たとえば、入社3年後の社員のスキル、評価、入社に至った経緯や所持している資格といった情報をデータベース化し、データを分析することでハイパフォーマーになり得る人を採用するのです。
ほかにも、アナログな手法で意思決定を行ってきたプロセスを、DXを推進することで変革した例として、営業活動や店舗の出店検討が挙げられます。
このうち営業部門では、展示会で入手した名刺やアンケート回答をリスト化し、直接電話をかけてアプローチをする企業も珍しくありません。これまで蓄積したデータをDXツールで分析し、成約した企業・しなかった企業の差分を明らかにすることで、受注確率の高い企業にアプローチする。こうした転換を行うことで、効率的かつ生産性の高い営業活動につながります。
このように、企業活動のさまざまな目的のために、DX推進が行われています。
CXとは
DXの定義は、デジタル技術とデータを活用することで製品・サービスやビジネスモデル、組織文化を変革し、競争力を上げていく取り組みです。一方で、CXは「Customer experience(カスタマー・エクスペリエンス)」の略語で、「顧客体験」を意味します。両者には、大きな違いがあることがわかるでしょう。
顧客はある製品やサービスの購入をとおしてさまざまな体験をします。製品やサービスを販売しているスタッフの接客態度やお店の雰囲気、購入後のアフターサービスなど、製品・サービスそのものから得られる価値だけでなく、購入前後の一連の体験から価値を見出します。
この、一連の体験を向上させることで顧客満足につなげようとする考え方がCXです。
1.TVのCMを見てある製品に興味を持つ
2.店頭で実際に製品を手に取る
3.店頭で製品を購入する
4.自宅に帰って製品を使用する
5.製品のアフターサービスを利用する
CXの場合、この1〜5のプロセスすべてを1つの体験と捉えます。
CXと似た言葉で、UXという言葉があります。UXは「User Experience(ユーザー・エクスペリエンス)」の略で、ユーザー体験という意味。UXの場合、5つのプロセスをそれぞれ1つの体験として捉えます。CXはUXが積み重なることで生まれます。
CXのメリット
CXを向上させることのメリットとして、リピーターの獲得につながる点が挙げられます。よい顧客体験をした顧客の満足度は高くなり、リピーターとして定着する可能性が高まります。リピーターを獲得することで、安定した収益につながります。
また、よい顧客体験はブランドイメージの向上にもつながります。製品やサービス、ブランドへの信頼性や愛着が高まることでファンを獲得することができます。
CX向上の具体的な流れ
よい顧客体験を提供するには、どうしたらいいのでしょうか。
カスタマージャーニーマップを作成する
CX向上のためにはまず、カスタマージャーニーマップを作成します。カスタマージャーニーマップとは、顧客が製品やサービスを購入する際、「製品・サービスを認知して興味を持つ」「製品・サービスを購入する」「製品・サービスを利用する」「製品・サービスのアフターフォローを利用する、使用感をレビューする」といった一連のプロセスを「旅」に例えたフレームワークをいいます。
顧客データを分析し、カスタマージャーニーマップとの乖離を把握する
カスタマージャーニーマップを使うことで、顧客がいつ、どんな行動をするか、どんな気持ちになるかを理解したら、次は顧客データ分析を行います。実際に得られた顧客データを分析した結果、カスタマージャーニーに沿った結果になっているか、なっていなければ、どこを改善すればカスタマージャーニーマップに近づけるのか検討します。
KPIを設定する
CX向上のために施策を打つ場合、その施策の効果が表れているかどうかを評価するため、KPIを設定します。KPIに近づくためにはどの課題を解決すればよいか、優先順位を決めて施策を実行します。
CXとDXは「目的」と「手段」の関係にある
CXとDXは、「目的」と「手段」の関係にあります。
デジタル技術やデータを活用することで製品・サービスを刷新したり、ビジネスモデルを変革したりすることで、顧客体験をよりよいものとする。つまり、CX向上という目的のために、DXという手段が用いられるのです。
裏返せば、CX向上の手段はDXだけではありません。たとえば、店舗スタッフの接客の質。デジタルツールを使うことで顧客ごとパーソナライズされた接客を提供することは可能かもしれませんが、スタッフの持つ個性をいかした接客がCX向上の要となる場合もあります。
そのため、CX向上の手段としてDXを検討している場合には、その課題は本当にデジタルツールを導入しなければ解決できないのか、顧客に価値を提供するためにより適した手段はほかにないか、検討することが重要です。
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