コラム
レコメンドで解決可能なビジネス課題を具体例を元に解説
いまや生活に不可欠なものとなったインターネット。手軽かつスピーディーに情報にアクセスできる一方で、ネット上にあふれる膨大な情報の中から、ユーザーが欲しい情報を届けるのは簡単ではありません。そんな状態からユーザーが欲しい情報を見つけやすくしてくれるのがレコメンドという機能です。この記事ではレコメンドの活用シーンや仕組みについて解説していきます。
目次
レコメンドとは
レコメンド(recommend)とは「推薦する、勧める」という意味です。
ユーザーの属性やweb検索履歴に基づいてパーソナライズ(個々人にとって最適な情報を提供する手法)が行われ、レコメンドエンジンの活用によってユーザーひとりひとりにとって最適なコンテンツが表示されます。
webサイトを見ているとき、関心のある商品や記事が表示されるのはレコメンド機能が働いているためです。
レコメンドが注目される背景とは
デジタル化が進み、多くの人がIT機器を使いこなす時代になりました。これによって、これまでのテレビCMや新聞広告といったマスマーケティングよりも、インターネットでの能動的な情報収集が主流となっています。
しかし、ネット上にある膨大な情報の中から「本当に求めているもの」「自覚はないものの、実は関心があるもの」に出会うのは難しいことです。より良い情報が欲しいユーザーは、「おすすめ」を表示されることで購買意欲をかきたてられたり、サイトに対する信頼度を高めたりします。
レコメンド機能により、ユーザーにとっては満足度アップ、企業にとっては利益増というメリットが得られ、webマーケティング分野で欠かせないものとなっています。
レコメンド機能が効果を発揮する領域とは
レコメンド機能が本領を発揮するのは、ロングテールな商品情報をユーザーに届けるシーンです。ロングテール(Long tail)とは、web上の販売において、売れ筋商品の売上をそれ以外の商品群の売上合計が上回る現象です。
具体的に考えていきましょう。
例えば、商品数10万点という豊富な在庫を強みとしたオンライン書店があるとします。このオンライン書店でレコメンド機能を使わずにおすすめ商品をPRする場合、おすすめの根拠になるのは「新作」や「人気ランキング」でしょう。
しかし、この方法では実店舗での販売戦略と変わらず、商品数が豊富という強みがユーザーには伝わりません。商品数をアピールするためには、10万点すべての情報についても、それを必要とするユーザーに届けられなくてはなりません。
そこで活躍するのがレコメンド機能です。レコメンド機能の活用でユーザーのニーズに合う商品を発見することで、10万点目の商品もおすすめとして表示されるようになり、売れ筋以外の商品群の売上増につながるのです。
これは実店舗では実現が難しい、ECサイトならではの強みといえます。
書籍に限らず、ECサイトではこのロングテール現象が多々見られます。実店舗では注目されにくい売れ筋以外の商品も、レコメンド機能の活用によりユーザーに届けることができるのです。
レコメンド機能の活用シーン
インターネットを利用していると、あらゆるシーンでレコメンド機能が働いていることがわかります。レコメンド機能は以下のシーンでよく活用されています。
ECサイト
ECサイトでのショッピング中に、「あなたへのおすすめ」「この商品に興味がある人はこちらの商品も買っています」といったメッセージとともに商品が紹介されます。ユーザーの好みに近い商品や関連商品を紹介することで興味や購買欲をそそり、単価アップや売上個数アップを狙います。
ニュースサイト
ユーザーが閲覧したニュースと関連性の高いニュースが「関連記事」「おすすめの記事」などとして表示されます。ユーザーの興味を維持させることでサイト離脱を防ぎ、ページ回遊率を高めます。
求人サイト
閲覧履歴をもとに、業種・職種・雇用形態・勤務地などさまざまの観点から求職者のニーズに合った関連求人情報を表示させ、サイトからの応募につなげます。より精度の高いレコメンドを行うことで募集企業と応募者間の認識のズレを軽減し、採用率の向上が期待できます。
不動産検索サイト
ユーザーの閲覧履歴に近い条件の物件を「この物件に興味のある人はこちらの物件もみています」といったメッセージとともに表示します。
SNS
TwitterやInstagramでは、自分に関連性のあるユーザーやフォローしたユーザーと関連する人が「おすすめユーザー」として表示され、自分と趣味や関心事が似た人と出会えたり、昔の友人を発見してつながれたりします。
インターネットバンキング
ユーザーの属性や検索履歴に基づいて、ニーズに合いそうな金融商品情報を表示させます。
レコメンドの仕組み
レコメンド機能の仕組みはどのようになっているのでしょうか。
ルールベース・レコメンド
企業があらかじめ「この属性のユーザーには商品Aをすすめる」「商品Bを買った人には商品Cもすすめる」「サイト訪問が2回目のユーザーには商品Dをすすめる」などのルールを決めておき、ルールに沿ってレコメンドを行う仕組みです。
企業の販売戦略に沿ってキャンペーン商品や季節限定品など商品をプッシュできる一方で、必ずしもユーザーの興味に沿ったものが表示されるわけではなく、顧客満足度にはつながりにくい面もあります。
協調フィルタリング
ユーザーの利用履歴に基づいてレコメンドを行う仕組みです。「商品Aを買ったユーザーの多くは商品Bも買っている。そのため商品Aを閲覧・購入したユーザーには商品Bをすすめる」というように、嗜好性の似ているユーザーは購買傾向も似るという前提のもと組み立てられています。
ECサイトでの「この商品を買った人はこちらの商品も買っています」といったメッセージで紹介される商品には協調フィルタリングの仕組みが使われています。
高い効果が期待できる一方で、新商品で閲覧・購入履歴が少ない場合や新ユーザーには有効なレコメンドをしにくいという課題があります。
コンテンツベース・フィルタリング
商品の属性に基づいてレコメンドが行われる仕組みです。商品登録の段階でその属性を解析・分類してグループ化し、ユーザーが閲覧した商品と類似する属性を持つ商品をレコメンドします。ECサイトでは、「似ている商品はこちら」「一緒に購入されているのはこちら」など、類似商品や関連商品をすすめられます。
商品情報に基づいているため、閲覧・購入履歴が少ない商品でもレコメンドが可能です。
課題としては、「同じような商品ばかりが表示され、多様性や新たな発見に欠ける」「商品登録時の属性解析・分類に手間がかかる」といったことが挙げられます。
ハイブリッドタイプ
上記で解説した仕組みにはそれぞれ弱点があります。こうした弱点を補強すべく、複数の技術を活かして利用シーンごとに仕組みを使い分けるのがハイブリッドタイプです。
ユーザー行動についてのデータが十分にあれば協調フィルタリングによるレコメンドを行い、同データが不十分な場合にはコンテンツベース・フィルタリングを用いるといった手法です。
ハイブリッドタイプの活用により精度の高いレコメンドが行えるため、近年ではこちらの手法が主流となっています。
レコメンドの新手法・バンディットアルゴリズムとは
上記で解説した4つの仕組みは、あらかじめ設定しておいたルールや商品情報、ユーザー行動履歴に基づいてレコメンドを行ないます。
こうしたルールや情報がなくても、システム自身がデータを集めながら学習し、最適な選択肢を発見してレコメンドの精度を高めていく「バンディットアルゴリズム」が近年注目を集めています。
手順としては、複数の選択肢をランダムに表示させ、そのうちクリックされる確率が高いものの表示頻度を上げていきます。これを繰り返すことで、最初はまったくのランダム表示だった状態から、クリックされやすい選択肢が上位に表示されるようになっていきます。
バンディットアルゴリズムは、「選択肢はいくつもあるが、どれをおすすめするのが効果的か予測できない」ときに有効で、ECサイトでの商品レコメンドやweb広告で表示させるべき記事を選択するといったシーンでの活用が進んでいます。
レコメンド精度をみがいて顧客満足度をアップさせよう
レコメンドは実店舗では実施が難しく、web上だからこそ実現できる手法であるといえます。レコメンドの精度を磨くほどユーザーは「欲しい情報を」「欲しいタイミングで」受け取ることができ、さらなる顧客満足度の向上が期待できます。それがひいてはリピーター獲得や売上増加につながるため、レコメンド精度を上げる努力が不可欠です。レコメンドの活用領域や仕組みについて十分に理解し、精度を高めていきましょう。
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