コラム
統計解析とは?具体的な活用事例や分析例を元に分かりやすく解説
近年、あらゆる分野でDX(デジタルトランスフォーメーション)に関する取り組みがなされています。DXと聞くと、AIやロボットなどを用いた自動化を想像される方も多いかもしれませんが、統計解析などデータを活用した取り組みもDXのひとつです。
この記事では統計解析についてわかりやすく解説するとともに、活用事例や分析例についても紹介します。DXを推進させるための参考にしてください。
目次
統計解析とは?
DXにおける統計解析とは、大量のデータを収集、統合、分析し、その結果から傾向やパターンなどを明らかにすることです。統計解析は、データ解析、データアナリティクスなどと呼ばれることもあります。
統計解析は、「記述的分析」、「診断的分析」、「予測的分析」の大きく3つに分類することができます。
記述的分析
記述的分析では、過去のデータを収集、分析し、グラフなどに落とし込んで「見える化」を行います。
大量のデータから最大値や最小値、平均値などを算出したり、ばらつきの指標である標準偏差を確認したりしながら、データを見える化していきます。
記述的分析を行なうことで、大量のデータに関する理解を深めることができ、過去から現在に起こったことを把握することができます。
売上や問合せ件数、サイトの閲覧数などをモニタリングすることも、記述的分析のひとつです。
診断的分析
診断的分析は、過去から現在にかけて起こった物事が「なぜ発生したのか?」を分析することです。
記述的分析で見える化したデータから、売上など気になるデータについて「なぜこの結果になったのか」という要因分析を行ない、何が要因になったのかを特定していきます。
診断的分析の手法のひとつに「回帰モデル」というものがあります。データを数式に当てはめて、「どの条件を変えれば売上が伸びるのだろうか?」を考えることができます。
予測的分析
予測的分析は、記述的分析や診断的分析から得た結果から、予測モデルを作り、未来を分析することです。シミュレーションも予測的分析といえるでしょう。
例えば、診断的分析を行なった物事の未来をシミュレーションすることで、予算の配分や仕入数量の予測が立てられるようになります。
統計解析をするメリットとは?
企業がDX推進において統計解析を行なうことのメリットは何でしょうか?
データに対して共通認識を持つことができる
企業には大量のデータがありますが、収集や統合がしっかりとできていないケースが散見されます。この場合、データの内容を理解しているのは、普段からそのデータを扱っている人のみである可能性が高いでしょう。
記述的分析をしてデータを見える化することで、多くの人がデータに関する共通認識を持つことができるようになります。
データドリブンな意思決定ができる
データはあるものの、統計解析ができていないために、長年の経験や勘に基づいて意思決定を行なっている企業が多くあります。
顧客や消費者のニーズが多種多様となっている現代においては、経験や勘に頼った意思決定をすることで、ニーズとのズレが生じる可能性があります。
企業活動においてデータドリブンな意思決定ができるということは、意思決定のズレが小さくなるということを意味します。データに基づく意思決定であれば、従業員が納得感を持つことができ、不平や不満を少なくすることも可能です。
機会損失を減らす
予測的分析で企業活動のシミュレーションを行なうことにより、人や資金のリソースの最適配置が可能となります。
従来のような経験や勘だけに頼った人員配置や資金配分を行なっている場合、リソースが足りなくなったり、逆に余ってしまったりして機会損失が発生する可能性が高くなります。
予測的分析でデータに基づくシミュレーションをしっかりと行なうことで、リソースの過不足に対するブレが少なくなり、無駄なコストを削減することが可能です。
このように、統計解析をしっかりと行なうことで、企業の経営状態を改善できるというメリットもあります。
統計解析の活用事例
実際に、統計解析はどのように取り入れられているのでしょうか。活用事例を確認してみましょう。
アンケート結果から新商品の開発を行なう
多くの企業では、顧客に対して商品に関するアンケートを実施しています。
商品の品質に関する満足度
商品の価格に関する満足度
サービスへの満足度
他の購入品について
顧客の年齢層や性別
これらのアンケート結果を集約し、相関関係を調べるなど統計解析を行なうことにより、次に市場へ投入するべき新商品が見えてくる可能性があります。
統計データから新規事業計画を作成する
統計解析は新規事業を計画する時にも役立ちます。特に新しい分野に挑戦する際は経験や勘を活かすことができないので、データに基づく統計解析が必須と言えるでしょう。
統計解析は自社で保有するデータのみではなく、国が公表しているデータも活用することができます。
経済産業省のホームページでは統計解析を利用した新規事業計画を作成した事例が紹介されています。
自動車の板金塗装を行なう企業が、特殊自動車の架装や制作を新たな事業にすると意志決定しました。この決定は、以下の統計データをもとに行われました。
- 自動車保有台数と自動車事故の件数
- 安全装置付き自動車の普及状況
- 損害保険会社の支払額推移
- 特殊自動車の保有車両台数推移
この企業が板金塗装に新規参入した当時、現在では主流となっている安全装置付き自動車が普及しつつありました。将来的に自動車事故の件数が少なくなることは確実であり、板金塗装業界全体の売上も減っていくことが統計データから判断できたそうです。
そこでこの企業が着目したのが、クレーン車などの特殊自動車の保有台数です。統計データより、将来的にも大幅な増減がなく、大手企業が参入してくるリスクも少ないと判断し、特殊自動車の架装や制作を新規事業とすると意思決定した事例です。統計データを活用した事業計画書によって、3億円の融資を受けられたという好事例です。
統計解析を取り入れてデータドリブンな意思決定を
世界最大の社会科学系オンライン研究発表ネットワーク「SSRN」に掲載された論文によると、データドリブンな意思決定をする企業はそうでない企業と比べ、5〜6%ほど生産性が高まると言われています。
統計解析を通じて企業のDX推進を促し、生産性の向上や業務効率化、競合との競争優位性の向上を目指しましょう。
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